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新しいことを始める

本レポートは、中小企業診断協会神奈川県支部会員有志が、インタネットを利用したメールマガジンに投稿した際の、私の担当分をまとめたものである。発表期間は2002年12月25日から3月25日までの6回分である。 

「新しいこと」を始める際の留意点(第1回)

2002.12.15   田中

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「夢の実現に向けて創造」を支援します田中です。これから6回くらいを目処に「新しいこと」を始めるに当たっての留意点について、私の経験、知識を基に披露します。私は55歳でサラリーマンを辞め経済的に大きなリスクのある経営コンサルタントとして7年前に独立しました。主要なお客様を中小の製造業とし、厳しい経営環境を乗り切る策を経営者や現場の社員と一緒に考え助言してきました。下記ホームページを覗いてください。

ムゲン(MGEIN)経営研究所 中小企業診断士 田中義二(よしつぐ)

http://www.sindan-k.com/mgein/

mgein@sindan-k.com

  *本題

起業、新規事業、新分野進出、新製品開発、転職、これらは全て新しい事への挑戦です。バブル崩壊以降13年くらい経っていますが、相変わらず企業経営においては経営の厳しい企業が多く存在します。漸く今までのやり方ではだめだと気付いても、新しいことが進んでいないのが実体でしょう。新しいことをやるには色々な課題やリスクがあるからです。

このシリーズでは、読者が主に現在経営をされている中小企業の経営者という前提で、新しく起業する対象より前記のそれ以降にターゲットを当てます。内容は失礼ながら日常的に陥りやすい現実的な点について解説していきます。

 

このシリーズでは以下の内容に触れる予定です。

1.        新しいことを始める必要性 今回述べます

2.        スタートで特許を調べ、特許上のリスクを回避する

3.        インタネットを活用した特許調査の方法

4.        高所から視野を広げて成功要因を確認する 4〜6回

  特に量産品を受注していた下請製造業は発注企業の海外移転などで、4年前に比べ売上が5分の1に減った企業もあります。これらの企業はご承知のように自社の技術が悪くなったわけではありません。また日本企業による逆輸入の影響、外国企業の製品の影響も今日では売上減に関係してきています。これらのことから新しいことをしていかなければなりません。横浜市経済局の2002年9月発表の横浜市景況・経営動向調査第42号によれば、90%の企業が競争激化と報告しています。対応としては、約50%の企業が関連分野及び新分野に進出という経営方針を立てており、取組み状況では、現在取組中を含め、約60%の企業が取組み予定です。

さて、新分野など新しいことを始めるに当たって留意すべき事をいくつか述べます。「隣の芝は綺麗に見える」と言われるように、人がやっていることはよく見えます。つい自分の今までの事業を諦めて全く新しいことに手を出すというのは以外に見られることです。

@    思いつきでやるのでなく、ます新しい事業に対する信念、事業の社会に受け入れられる存在価値などを考えてみる必要があります。その事業を成功させようと思う執念がどの位有るか。協力者を説得させるに十分な意気込みを持ち得ているか。この辺をまず自問自答することが大切です。

A    新規事業の製品あるいはサービス、市場、顧客が現在と離れていないか。経営者の陥りやすい点は今までの事業と製品、市場がかけ離れたところを狙うことです。横浜市ベンチャーマネジャーの仕事をさせていただいていますが、港湾の管理経営者が災害時の自分の存在を知らせる信号発生器を考えたり、牛乳宅配業者が犬猫の糞尿処理装置を事業化しようとしたりする例など、この典型例です。これらの既存事業とかけ離れたところを狙うのは避けるべきです。

B    この頃少し静かになりましたが、ビジネスモデル特許が注目されました。知的財産権で保護されるのは物だけではありません。新しい製品を事業化したり、新しいサービスを提供する場合、その新しいと思ったことに先行者がいないか確認することはきわめて重要なことです。知らずにまねていたことも、侵害者(抵触者)には法的罰則を受けます。今まで開発してきたことが全く時間も含めムダになります。まず知的財産権を確認する必要があります。新規ならば発明の届け出をしておくことをお薦めします。

  次回は上記の特許に関して述べることにします。ご期待下さい。

   

「新しいこと」を始める際の留意点(第2回)

スタートで特許を調べ、特許上のリスクを回避する

2003.01.9改訂 田中

新年明けましておめでとうございます。

 新しいこと、当社にとって新しくても、世の中と比較したとき新しくないときは、特許等を含む知的財産権の侵害を気にしなければなりません。製品あるいはサービスを世の中に提供する場合、よその会社が知的財産権を取っている場合は気がつかなかったとしても侵害した場合、訴えられ損害賠償をしなければならないことも発生します。売れる売れない以前の問題です。開発、試作に多くの費用を発生させる、沢山造って拡販する、このような時は特に特許調査をスタートする前にすることをお奨めします。

 我々が日常目にするのは、既に市場で認められよく売れているものです。見たことがない、聞いたことがないからと言って、新しいもの・こととは限りません。それ以外に多くのもの・ことが既に誕生し始めていると思った方がよいでしょう。人は同じ頃に大体同じようなことを考えているようです。いやもっと先人がいると思うべきでしょう。例えば生産設備受注設計製造業者が寝たきりの人の「床ずれを防ぐベッド」を開発し自社製品にしたいという新規事業の相談を受けました。特許はまだ調べていないと言うことで、インタネットを借用し、その場で特許を調べますと年間100件以上が出願されていました。この結果その経営者はスケッチ図を書いた段階で先願に勝る性能、コストで製造することに不安を感じられたようで諦めました。設計ができる中小の製造業者は、図面を書いて試作するところまではお手のものです。逆にこの特徴が、調べることを面倒臭かったり無視しがちなのかも知れませんが。

 特許で言うならば、特許庁に出願されているものに対し、機能を達成する方法・手段が同じ場合(方法・手段が同じといえるかどうかは、判断が難しいときがありますが)は製品・サービスとして造っても先願発明が審査請求された結果、特許になればムダになるということです。ムダになるというより、侵害行為として先の出願人から訴えられる場合があります。いっそのこと良い特許が見つかった場合は譲り受けることも考えてみるのは有効です。特許を譲り受ける件は次回もう少し詳しく紹介します。運悪く、造ってしまった後に関連する公開特許情報を見つけた場合は、早めに弁理士など専門家に相談することをお奨めします。

 特許を調査した結果、幸い実現しようとしているアイデアが新しく、類似のものが見つからなかった場合は、そのアイデアによって機能が再現できるまで明細書に記述し、早めに特許出願を検討してみて下さい。特許は、発明を公開する代わりに一定期間その発明を独占できます。

 次回第3回(2月5日)は、自社でできるインタネットを活用した特許調査の方法を紹介します。

以上

  「新しいこと」を始める際の留意点(第3回)

インタネットを活用した特許調査の方法

2003.01.27 田中

前回は、新しいことを始めるスタート時点で特許を調べ、特許上のリスクを回避することについて紹介しました。今回はどこかに出かけなくても社内で、あるいは自宅でインタネットを使って特許調査をする方法をご紹介します。

 数年前までは、コンピュータよる検索は一部の企業人による高い費用を伴った検索でしたが、旧組織になってしまいましたが日本テクノマートからインタネットを使い無料で特許のデータベースを使えるシステムを提供いただきました。調査費用と、特許検索を一般人が使えるように環境を整備してくれたことは、特に中小企業の経営者にはありがたいことと思います。

 特許情報は出願後1年半で第三者に公開されます。インタネットで発明内容を見ることができます。従って特許調査は開示の具体性もあり、例えば新製品開発のネタ探し、アイデアの収集、競合企業の開発動向など色々調査に使えます。今回は、新事業の新規の確認、侵害をしていない確認のために特許調査をするとしましょう。

インタネットの検索画面で、「特許電子図書館」と入力し、検索しますと特許庁の画面に入れます。その画面で「特許実用新案に」枠から、「公開特許公報フロントページ検索」を選択して下さい。この画面での検索条件は、発明に関わるキーワード、分かっていれば出願人などのキーワード入力枠、出願日の期間、専門的になりますがIPC分類です。IPC分類は技術分野を細分化し、その分野に関連ある発明をまとめたものです。初心者はキーワード入力による検索からになるでしょう。初心者でも検索できますが、弊害は必要のないノイズが入ること、逆に必要な情報が抜けるという欠点があります。重要な特許調査には、従って,IPC分類によるあるいはFタームという検索を使うことをお奨めします。これらの活用が必要な場合は、調査目的を正確に示し、弁理士あるいは検索の経験者に依頼するのが無難でしょう。

 元勤務していた(株)リコー生産技術研究所の特許研究会の貴重な調査結果をご紹介しましょう。ある発明に対し、キーワード検索の結果の不要情報(N)と必要情報(S)の抜けを調べた結果です。IPC分類の検索結果271件、フリーワードの結果406件、フリーワードによる重要な発明の漏れ101件、フリーワードによるの不要なもの236件でした。フリーワードによる不要なものは約60%ありました。

 S/N比をいかに高めるかは特許調査の目的によって異なってきますが、身近に特許調査ができる環境になりました。是非特許電子図書館を活用され安心して新しいことに挑戦していただきたいものです。 

ご参考に神奈川県における特許調査を支援、アドバイスしてくれる専門機関を以下にご紹介します。

    発明協会神奈川県支部 神奈川中小企業センター内 TEL045-633-5055                 

    神奈川高度技術支援財団 KSP内 TEL044-819-2100

    神奈川県産業技術総合研究所図書室 TEL046-236-1500                   

・ 神奈川県立川崎図書館 TEL044-233-4537

 

 以上

「新しいこと」を始める際の留意点(第4回)

高所から成功要因を確認する(1)

2003.02.15        田中 義二

 

前回新しいことを始めるに当たってまず特許調査をし、新しいことの確認によりリスクを回避することをご紹介しました。

さて今回は、別の視点からすなわち高所から新しいことが成功する要因を確認してみましょう。

私は日韓産業技術協力財団が主催する日本における韓国企業研修生の「経営管理」研修講師を担当しております。韓国の人々は世界でも最上位の起業意識が高い民族です。グループ演習で彼らに新規事業を成功させる要因を挙げてもらいますと、直ちにもの・サービスの性能面などの差別化を挙げます。そのほかはあまりでてきません。みなさんの発想も似通ったものになるのではと気になります。今回はこの点の助言です。

成功すると思ってしまうと、確信し周りを見渡す気持ちが薄れがちになります。新規事業を成功に導くには、自社の経営資源を冷静に棚卸しをしてみることと、3年くらい先までの外部環境を予測してみることが重要です。

この内部環境と外部環境を整理するのを一般的にSWOT分析といっています。SはStrong(強み)、WはWeakness(弱み)、OはOpportunity(機会)、TはThreat(脅威)です。

貴社の強みはなんですかとお尋ねした場合、はっきりと言えますか。これは意識して中期的に努力し続けなければいえないものです。しかし現実、今の顧客との取引が成立しているからには、顧客は競合企業よりある面で強いところを認めてくれていると考えられます。わからなければ今の取引先に弱いところを含め聞いてみるのが良いでしょう。

トータルの完成品で見ると見つからなくても、その中に含まれるプロセス(行程)に分解すると見つけやすいでしょう。あるいは生産管理などソフトの面にお金で買えない強みがあるかもしれません。

問題は、新しく進める事業にこの強みは活かされるかということを確認する必要があります。新規事業に特許などで保護された参入障壁があるか、予測される競合企業、その他の企業に勝てる強みがあるか、成功させるための要因を持ち得ているか、すなわち核となる蓄積された技術が使えるかを確認してみてください。

機会、脅威の面では、貴社の競争環境を中期的に予測することになります。この中には、規制の強化、緩和による影響、最近では珍しくなくなりましたが、異業種からの参入なども考えられます。中国の影響は会社によって機会とも脅威ともなりましょう。いずれにしても今より3年くらい先の外部環境を分析し、新規事業戦略に反映することが求められます。

新しいことを始める企業に対し、国、県などからの助成金制度、専門家派遣制度などが色々あります。締め切りは今月来月に多くの制度が集中しております。有効に利用され、成功を祈念します。

以上

  「新しいこと」を始める際の留意点(第5回)

高所から成功要因を確認する(2)

2003.02.27田中 義二

  前回は高所から確認するうちの主に競争環境について確認しました。今回は新しいことを進める自社の組織関係の確認をしていきます。

このシリーズの冒頭では、事業の目的、協力者を説得できるような信念の有無などに触れました。具体的にこの思いを展開していく場合には、組織の確認に以下のようなことを診る必要があります。

一般的には顧客からの要請・ニーズから新しいことをやる方がリスクは小さいですが、新しいことのスタートは、経営者の市場で受け入れられるという(シーズ)発想から取りかかることが多いでしょう。この場合初めからこの製品・サービスを誰にという主要な顧客あるいは市場を特定してかかることが経営資源を有効に使うことになります。創ってからどこに売ろうかという順序ではありません。当然ターゲットに決めた見込み顧客が絞られれば、製品・サービスに対する予測される要求事項が詳細に決まります。期待される価値、顧客が求める価値ともいえるものです。

この価値を実現する技術、ノウハウ、人材、設備、あるいは特許権などは既にありますか。試作のための運転資金は目処が付いていますか。また不足する経営資源は、外部の協力者に求める(アウトソーシング)戦略も考えられますが、このビジネスパートナーの要求事項も協議の上解決しておく必要があります。

中期的視点からは、前回競争環境を検討しましたが、その環境を認識し他社に勝つための戦略を考えておくことも必要です。戦略面は次回少し触れますが、売上計画と運転資金調達に関わるお金の面の事業計画書を作成しておくことを期待します。事業が順調に立ち上がり量産が開始されたときは特に資材調達費が多く発生します。一方計画通り売上が伸びない場合のリスク管理も必要になります。元気なときは攻め一方で、うまくいかない場合のことを人間は考えにくいものです。

 次回は6回目私が担当する最終回になります。今までをおさらいし、新しいことを成功させるプロセスにISO9001を関連付けまとめとします。ご購読お願いします。(参考:日本経営品質賞組織プロフィール)

ご意見、ご質問は下記メールアドレスへお願いします。

以上

  「新しいこと」を始める際の留意点(第6回、最終回)まとめ

2003.03.15

田中 義二

いままで新しいことを始める際の留意点を述べてきました。おさらいをすると、どの程度新しいのか、競争して勝てるものが含まれているか。特に特許侵害には注意が必要であることを述べました。新しいことを行っていく思いを文書化し、参画者の賛同を得る、事業方針、目標値を立てる。事業戦略作成に当たっては、中期的な外部環境の予測、狙う市場・業界の成長予測、社内の強み弱みの棚卸の分析結果を反映する。このようなことを述べてきました。

さて、新しい事業のシーズ(種)あるいはニーズがスタートに当たって磨けば良いものになることの確認ができました。それをいかに強いものにするかを決定するものが事業戦略です。事業戦略をつくる目的は事業を成功に導くためであり、従って一番重要なこととして限られた経営資源である資金と人、時間などをどのように活用するかと言うことになります。当然ターゲットを定めそこへの資源の集中が必要です。市場・顧客をどこにするかを絞り、隙間を狙うことが求められます。

 次は目標達成に向けて計画通り如何に実行するかになります。この活動は内部的活動であり仕組みをつくり運営していけば実現の可能性は高くなります。ご承知の通り多くの中小企業もISO9001を取りました。残念ながら80〜90%位の企業が経営に寄与しないと言われていて残念なことです。この根本的原因は狭く解釈した品質に有ると思っています。品質目標に新しいことを成功させるに必要な目標値を挙げれば当然経営に役立つISOになるはずです。

この全社目標を、各関係部門に展開し自主的に計画が実行されているか定期的に確認を行うと共に、現在の仕事のやり方をもっと計画実現が可能な新しい方法に検討すれば、職場も活性化します。全社的には、社長が全社目標達成度合いを定期的に実施し確認していけばよろしいでしょう。これらの活動はISOで義務付けられていますが、目標値の設定によって自主的に実施する必要性を感じ経営に活きたISOの展開で新しいことの事業が成功することでしょう。

ISOは顧客満足度を高め、継続的に受注がいただけるように自社の経営を良くするために活用しないと、取得しても維持しても意味がないことは納得いただけることでしょう。ISO9001を経営に活かすスポット的な支援に応じられます。

今、国を挙げて新しいことを行うことに支援しております。支援制度をうまく活用され、多少の困難はものともせず、新しい事業を成功されるよう応援しております。6回にわたってのおつきあいありがとうございました。

(完)


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